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なのにそのキスは、1秒にも満たないような、どこか儚さ滲むキスだった。 離れていく感触に、心の中で嫌だと叫ぶ。 「……どうして」 「え?」 「こんなキス、久しぶり……っていうか」 どうしてそんな、意地悪すんの。 なんて、心の中で言ったって仕方ないけど。 俺はもう、触れるだけのキスじゃ足りないんだ。全然、足りない。 互いの中に侵入して、深く、深く舌を絡めて。溶けて混ざり合うくらいの、欲を孕んだキスがしたい。 身体も脳も全部を溶かし尽くすような、蕩けるキスがしたい。 普通のキスじゃ、触れるだけのキスじゃ、もう満足出来ない。 キスフレのキスじゃ、友達のキスじゃ、もう嫌なんだ。 俺は隆太の中の特別になりたいと思った。皆と同じ友達じゃ嫌だと思った。だからキスフレになった。 でも今は、キスフレじゃ、足りない。キスフレより、もっともっと特別な存在になりたい。 キスフレじゃ、この間みたいなキスはしてもらえない。 好きだから、隆太が全然足りない。 好きだけど、俺からは手を伸ばせない。 キスフレじゃ、隆太へのこの気持ちを、言葉に出来ない。 隠しきれない感情が、今にも暴走してしまいそうなのに。 俺は、どうしたらいい。 どうしたら、隆太に好きだって、言っていいの。 この張り裂けんばかりに膨れ上がった想いを、今直ぐにでも言葉にしたかった。いっそ叫びたいと思った。 この衝動は、きっと、他の何をしたって消えないんだ。
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