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隆太の好きな人ってどんな人と聞くと、隆太は少しだけ考える素振りを見せた。 静かに隆太が喋り出すのを待っていると、そんな俺の頭をポンポンッと叩いて、隆太が朗らかに笑った。 「姿勢が」 一音一音を大事にするように、隆太がゆっくりと語り始める。 「姿勢がいいんだ。立ってる時も、座ってる時も。後ろ姿がすっげえ綺麗で」 驚く程に優しい声音が、俺の鼓膜を揺らす。それが、心地よくて。 「物の扱いが丁寧で」 一つずつ、大切に、それこそ丁寧に、言葉が紡がれていく。 馳せた想いが、音になっていく。 「性格は、真面目つーより頑固で」 想いが隠しきれないのか、それとも隠すつもりがないのか。 言葉の端々が好きって気持ちで溢れてて。 「普段物静かなのに、好きな事に夢中になるとすっげえ無邪気になる。それが、なんか可愛くて」 聞いてるこっちが、その熱に、溶かされそう。 それは、甘い、甘い温度だった。 隆太は言った。 そいつはちょっと、変わった奴なんだと。 でも、周りに流されない強い意志を持ってる奴なんだと。 「そいつは、普通じゃない俺を、普通で居させてくれる」 最後に隆太が、とびっきりの笑顔を見せた。 愛おしいと言わんばかりに、はにかんだ笑顔を。 「そういうとこが、すっげえ、好きなんだ」 その表情に、俺はまた、恋をした。 想い人へ、たった一人へ、真っ直ぐに注がれる。 隆太の愛は、純粋で、誠実で、とても綺麗だ。 「なあ、太一。お前はもう、気付いてんだろ」 その言葉が心の琴線に触れた瞬間、一筋の涙が俺の頬を伝った。
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