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ポタリ、ポタリと頬を伝う水滴が床へと吸い込まれていく。 その水滴はどんどん零れ落ち、ものの数秒で小さな水溜りを作ってしまう程に止めどなく俺の目から溢れ出す。 一気に溢れ出すのは、涙だけじゃない。抑えていた感情が、今にも制御出来なくなりそうだった。 焼かれた胸を、痛いくらいに鷲掴みにする。尋常じゃない程鳴り響く音が、一瞬で俺の鼓膜を支配した。 「太一、何で泣くんだよ」 「……っ、ごめ、俺……っ……」 眼鏡を外して手の甲で目を擦る。でも拭っても拭っても、涙が止まらない。 色んな感情が心の中でひしめき合ってて、もうこれが何の涙なのかもわかんない。 俺は、頑固だ。それに、誰も寄り付かないこの辺鄙な場所に好き好んで通ってる時点で、変わってもいるんだろう。 でも確信に触れたのは、容赦や特徴が似ていたからとかではなくて。 話している時、隆太が、真っ直ぐに俺を見てくるから。その瞳に、俺を映して笑うから。 視線で、声で、言葉で、行動で……好きだと言われた気がした。俺の事が、好きなんだと。 その熱量を感じてしまえば、もう、自分の思い違いだとは思えなかった。
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