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隆太の身体が、一度大きく左右に揺れた。目に溜まる涙が、今にも溢れ落ちそうだった。
「……っキスフレじゃ足りないは、俺の方だ。太一と付き合いたい。キス以上の事だってしたい」
考えてる事は、互いに同じ。
でも俺達は、男同士。そう簡単に告げていい想いじゃない。
「けど、俺達は、周りから見たらやっぱ普通じゃねえんだっ……」
普通にしてたって、どうしても普通と違う。そう、張り裂けんばかりの声で、隆太は呟いた。
「今までは普通で居れたかも知んねえ。でも、付き合ったら、いつかはどうしても越えられない壁にぶつかる」
今は、誰も俺達のこの関係を知らない。だから、俺達は俺達で居られてる。多分隆太は、そう言いたいんだろう。
これがいつどこで、どんな形でバレてしまうかも知れない。
その時に、今と同じで居れるかはわからない。そんな想いが、ひしひしと伝わってくる。
「言葉にしたら、もう、自分で自分を抑えられない。お前を絶対に、離せなくなる。だからもし俺との未来に少しでも不安があるなら、俺から全力で逃げて。何をしてもいい。全力で、俺を拒否してくれ」
ーーこの想いを、言葉にする前に。
隆太が俺の身体を、強く押し返してきた。途端に空く、二人の距離。
まるで、互いの間に一線を引かれたみたいに。
その後俺の目の前に差し出した、隆太の手。その手の意味は、瞬時に理解した。
この手を取れば、きっと、俺達の間に引かれた境界線は、無くなるんだろう。
俺達の関係は、友達でも、キスフレでもなくなる。
手を取ったその瞬間から、俺はきっと、隆太の特別になる。
「未来を考えて、それでも俺と付き合うのを選ぶんだったら……」
俺の答えは、もう、決まっていた。
「一生分の、覚悟をしてくれ」
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