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「……ところで、俺、待ってるんだけど」
「……っ……」
まだ俺は、隆太の口からその言葉を聞いてない。間接的な言い方しかされてない。
ずっと、ずっと言って欲しくて堪らないのに。
「隆太からの告白、待ってる。俺の方から言っちゃいそうだから、早く言って。これ以上抑えきれない」
「……っ、急かされると、困る」
「じゃあ俺か……むぐっ……」
「それはもっと困るっ……せめて、俺から、言わせて」
隆太が慌てて、今にも想いを口にしてしまいそうな俺を制した。
俺の身体を抱き締めたまま、俺の肩口へ頭を預ける。
その場で一度大きく息を吸うと、何かを決心したかのように隆太が勢いよく顔を上げた。
「……す、きだっ……太一が、好き」
真っ直ぐに、俺の目を見つめて。
有りっ丈の想いを込めて。
心の奥底から声を振り絞って、それは紡がれた。
鼓膜を通さず、心に直接響いてきた。
心全てを食らい尽くされるような、強い、強い言葉の衝撃。今までに感じだ事のない、優しい痛みが俺を襲う。
ああ、どうしよう。また、泣いてしまう。
「……っ俺も、隆太が好きだ。好き過ぎて、息出来ないくらいに」
「……っ……ははっ、なんだそれ、ずっげえ、嬉しい……」
そう言って、隆太がぎこちなく笑う。
俺はそっと、両手で隆太の頬を包んだ。涙に濡れた、頬を。
「……んっ……」
隆太の唇に、自分の唇を重ねた。
付き合って初めてのキスは、薄っすらとしょっぱさを含んでいて。
それすらも今は、堪らなく愛おしい。
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