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隆太が不意に、俺の顔を覗き込んできた。額と額をくっ付けて、どこか欲を孕んだ表情を見せる。 この表情をさせてるのが自分なんだと自覚すると同時に、体温が一気に上昇した。 「太一、その顔、好きがだだ漏れしてる」 「何それ、どんな顔」 「キスしてって、言ってる顔」 「……うん。一回じゃ、足りなくて」 その言葉を皮切りに、どちらからともなく手を合わせて、触れるだけの口付けを交わす。 「んっ……、んっ……ぅ……」 何度も何度も啄むように口付けて、互いの間にある隙間という隙間を埋めた。 もっと引っ付きたいのに、着ている服が邪魔だ。でももう、そんな事を考えてる余裕はない。 隆太から与えられるキスの雨で、俺の脳みそは既に溶けかかっていた。何も考えられないくらいに、この行為に侵されていた。 隆太のキスは、俺にとっての麻薬だ。摂取し続けることを止められない。しなかったら禁断症状が出て、気が狂いそうになる。 だから何度だって欲してしまうし、された瞬間、快楽の海にダイブしたみたいな感覚に陥る。 この瞬間にも。 ああ、俺は今、酷く優しい多幸感に溺れてる。 「……んっ、はっ……ねえ、もっと。もっと、して」 「っこれ以上ダメ、無理、俺の心臓破裂するっ……」 「……それは、俺もっ、だけどっ……してよっ、もっとっ……んっ、んぅ……」 足りない。もっと欲しい。 唇が溶けてなくなるくらい、最高に甘美なキスを。 「太一……口、開けて」 その言葉を聞いただけでもう、心臓が、破裂すると思った。これからされる行為を想像するだけで身体が疼く。 どうやら付き合う事になったって、俺の心臓は幾つあっても足りないらしい。 「好きだ」 唇が再び塞がれる瞬間耳元で囁かれたその言葉は、今まで食べてきたどんな果実よりも、どんなスイーツもりも甘かった。
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