8

2/16
前へ
/188ページ
次へ
文化祭前日にクラスの殆どの生徒が泊り込み、ギリギリまで準備や最終調整を行って無事迎えた文化祭当日。 他の学校からの生徒や一般客も多く訪れるこの学校の文化祭は、二日に分けて行われる。 準備期間中、忙しさに追われていた俺と太一は再び会えない日々を送っていた。 一日目の今日、俺のクラスの出し物は思いの外好評で充分な集客を得ているみたいだ。 複雑に作られた迷路で、簡単にはゴールにたどり着けないがそこがまた良いと評価を受けた。 クラスの生徒達はチラシ配りや案内係、受付係などの仕事を振り分けられていて、俺の仕事は前日までの裏方だけだったから当日二日間は自由に歩き回れる。 まあ自由時間がたっぷりとあるからっつっても、一人じゃ意味ねえんだけど。 由乃はクラスの女子に頼まれて一緒にチラシ配りに行っちまったし、太一は言わずもがな見回りや学校案内で忙しいし。 校舎から一歩出れば今日の空は雲一つ見当たらない快晴で、外には屋台が立ち並び、俺は焼きそばやイカ焼きを買って練り歩く。 すれ違うクラスメイトと少しだけ話をしたりして再び校舎に戻れば、各クラスがお化け屋敷や占いの館、演劇なんかの出し物を行っていた。 しかし俺はどの教室にも入る事なく当てもなくぶらぶらと歩く。 気付いたら、どうやら別館の方まで来てしまっていたらしい。別館は、人の通りが落ち着いている。 別館は主に文化部が展示目的で教室を使用している筈だ。 今居る別館のニ階では美術部が作品の展示を行っていて、主に生徒よりも一般客とすれ違う事が多い。 そう言えばここの美術部は結構有名だったな、なんて思い出した様にチラリと部屋の中を覗いてみる。 その瞬間、俺の目は飾られた絵よりも先に教室内に立っている人物を捉えた。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加