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なんだ、これっ。 太一がまさかこんな事をするなんて。しかも、いつ見つかってもおかしくないこんな所で。 頭は現実について行けず、太一から与えられるキスをただただ受け入れた。誰にも見つからないように、漏れそうになる声を必死に押し殺す。 「……っ……、っ……」 何でこんな事になったのかわからない。ただわかってるのは、触れてくる唇の熱が俺の体温を恐ろしく上昇させるって事だけ。 しかし次の瞬間。 俺達の直ぐ近くで話声が聞こえてきて、途端に俺の思考は現実に引き戻された。 ヤバい、と瞬時に思い背中に嫌な汗をかく。身体に篭りかけた熱は、徐々に引いていった。 今正に俺達の真上を歩いている所だろう。足音が直ぐ近くで聞こえてきて、先程とは別の意味で心臓の鼓動を速くする。 これは、少しでも声を上げたら、お終いだ。 とにかくキスを止めさせようと太一の胸をドンドンッと叩いてみるも、太一は話し声に気付いていないのかキスを止めようとはしなかった。 その上凄く、余裕の無い荒っぽいキスだ。それはもう、正常な思考回路も何もかもを奪うような。 ダメだ。ダメだってわかってんのに。 やべえ、溺れそう。
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