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「……っ……ふ、はっ……太一、何すんだ……」 酸欠になりそうな程キスをされて、やっと解放された唇からは堪えきれない吐息が漏れ出す。 触れるだけのキス、だった筈なのに腰が抜けるかと思った。実際、太一の腕を気付かないうちに握り締めていた。 俺の様子を見て満足したのか何なのか、太一は嬉しそうに笑って俺の身体から手を離す。 「ごめん。ずっと我慢してたんだけど……隆太の顔見たら、どうしてもキスしたくなった」 「なっ……」 「これで充電満タン。ありがとう」 「は、はあ……っ!?ちょっ……、待っ……」 何故か太一は俺に礼を言って、腕時計で時間を確認すると、慌ててじゃあまたと手を振り去って行った。 走って行く後ろ姿に手を伸ばしてみるも届かなくて、取り残された俺はその場にズルズルと座り込んで頭を抱える。 ちょっと、ちょっと待てよ。 なんだそれ。顔見たらキスしたくなったって、なった、って。 「…………っ……んだよ、それっ……」 太一は一体、こんな事をして、そんな事を言って、俺をどうしたいんだ。 人の気も、知らねえで。 心臓は、見事にバクバク。顔なんて、人に見せられない程に赤みを帯びていて、俺、暫くは、ここから動けそうにない。
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