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ーーーー自分の恋愛対象が他の奴と違うと自覚したのは、中学に入った頃だった。 周りの男子達はどんどん発育が良くなっていく女子を見て意識し始める中で、俺だけが何の興味も持てなかった。 むしろ、男子の着替える時に見せる無駄な肉の無い身体を見る度に、ドキドキしてた。 特定の人が好きだったとか、そういうのはなかった。 でも俺は確かに、男が恋愛対象だった。 最初は、それがおかしいとは思っていなかった。別に、男が好きなだけ。ただそれだけだと思っていたんだ。 その事に偏見を持つ人がどれくらい居るかなんて、その時は全く知らなかった。 俺は思い知った。これは、絶対に知られてはいけない事だったんだと。男が男を好きになるのは、おかしいんだって事を。 クラスメイトから好きな芸能人を聞かれて、俳優の名前を答えた時に向けられた、変なものを見る目。 女のタイプを聞かれて答えられなかった時の、冷ややかな眼差しが、俺に現実を突きつけた。 その時は、咄嗟に誤魔化したのが上手くいき、特に問題にはならなかった。 けどその視線は、中学を卒業するまで、ずっと頭の中にこびりついたまま離れなかった。
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