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『それ、似合うね』 不意に、そんな事を言った奴が居た。 入学して二ヶ月経って、殆どの奴が何かしらのグループを作ってる中で、クラスで浮いた存在の俺に、そいつは話しかけてきた。 他のクラスメイトの雑音に紛れて、斜め後ろに座ってる俺の方へ、上半身だけ振り向いて。 それが指しているものが、金色の髪の事だとわかった俺は、少しだけ前髪を弄る。 『……これ、校則違反なんだけど』 優等生がそんな事言うの、おかしんじゃねえの。なんて感じで、嫌味ったらしく言ってみる。 そいつは見るからに優等生って感じで、実際頭もいいみたいだし、休憩時間もずっと本読んでるような奴だった。 俺のそんな不躾な言葉を聞いても、そいつは特に気にした様子はなく、態度も口調も全く変わらなかった。 『そうだね。でも染め直すなら、なんか勿体ないな。黒髪の生徒が多いから、その金色はよく映えるのに』 それを聞いて、俺は目を丸くした。そんな事言われたのは初めてだったし、そんな風に言われるとは思わなかったから。 どうしたらそんな発想になるのか不思議だった。
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