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さらりと揺れる黒髪。 本のページをめくる細い指、眼鏡の奥に潜む漆黒の瞳。 気付くと、俺はそいつを目で追っていた。 一度でいいから、その瞳に俺を映して欲しいと、無意識思ってた。 斜め後ろの席から、ずっと後ろ姿を見つめて。 こっち向けって、心の中で念じてた。 席替えされたって、どこに居ても視線はいつだってそいつに向かっていた。 毎日、それも四六時中と呼べる程に、そいつの事ばかり考えてた。気になって仕方なかった。 休みの日なんて、なければいいと思った。学校に行くのが、俺はいつしか楽しみになっていた。 俺はいつの間にか、そいつに、特別な感情を抱いていた。 俺はそいつに恋をする事を、止められなかった。 これが俺の、初恋だった。
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