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「ごめんっ、遅くなったっ……」
「お疲れ」
「うん。隆太もね」
実行委員の仕事が少し長引いたらしい。太一は俺よりも30分遅くここへやって来た。
実行委員の仕事は全て終了ししたそうだ。後夜祭メインのキャンプファイヤーは、生徒会と先生達が進行している。
「隆太は、キャンプファイヤー参加しなくてよかったの?」
「いいよ、騒がしいし。それに、お前と二人きりになりたかったから」
「……っ……隆太って、時々物凄くストレートだよね」
そう言って、太一が恥ずかしそうにふいっと顔を背けた。その行動が、可愛くて、つい笑ってしまう。
太一の言動、行動、仕草。一つ一つが俺の心を揺さぶる。堪らなくさせる。
ああ、ほんと、好きだな。
「……太一、おいで」
両手を広げて呼ぶと、太一がおずおずと近寄ってきた。
互いに向き合って、俺は太一の腰に背中を回す。至近距離にある真っ黒な瞳を覗き込めば、羞恥に染まる表情で、また顔を逸らされた。
昔は、後ろ姿を見るだけだった。でも今は、こんなにも至近距離で顔を見れる。
この横顔も、すっげえ、好き。
「なに……じっと見て」
「太一のこと……ずっと、好きだったなって思ってさ」
「ずっと……?」
「ああ。ずっと、だな」
太一が前、俺に聞いてきた事があった。どうしてここに来たのかと。
この学校には、図書室が二つある。殆どの生徒は、もう一つの図書室を利用する。
それなのに、何故俺がここに来たのかと、太一は疑問に思ってた。
あの時はなんて言っていいかわかんなくて誤魔化したけど、もう、言っていいんだな。
太一に、俺がここに来た理由を知りたがってただろうと問いかける。すると太一が少しだけ目を見開いて、こくん、と頷いた。
俺はすぅ、と空気を吸い込んで、あの日の情景を思い出しながら口を開く。
「あの日俺は、太一に会いに、ここに来たんだ」
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