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「…………ん、ふっ……」 隆太が、先程同様に俺の唇に自分の唇を押し当ててきた。触れる度に熱を帯びる身体に、俺は我慢出来なくなり自分からもキスをする。 呼吸するほんの一秒だって待てなくて、何度も何度もキスを繰り返した。酸欠になったって、構わないってくらいに隆太に手を伸ばす。 頭を引き寄せて、身体を密着させてもうお互いの間に隙間なんて無くなってしまったんじゃないだろうか。この心臓の音が、どちらのものかすらももう既にわからなくなった。 しかし一向に触れるだけのキス以上の事をしてくれなくて、耐え切れなくなった俺はぺろりと隆太の唇を舐めてみる。 あんまり焦らされると、困るんだけど。 「なっ……何すんだっ……!」 「だから、これだけかって聞いたじゃん」 「てめえ……折角人が我慢してんのに……っ。煽ってんじゃねえよ」 「だって、もう我慢する必要ないし」 「なっ……、おまっ!?…………あーっ、もう、知らねえからな」 「……んんっ」 強引に、唇をこじ開けられて。 ぬるりとした感触が口内へと侵入してきた。俺は久々の感触にビクリと身体を震わせながらも、おずおずと舌を絡めにいく。 「……ぁっ……ふ、ぅっ……」 自然と甘い吐息が漏れて、まるで自分の声じゃないみたいで凄く恥ずかしくなった。カアァッ、と音を立てて顔を赤く染めれば、視界の片隅で隆太がニヤリと笑うのがわかった。 俺は今更、自分がしてしまった事の重大さに気付く。しまった、煽り過ぎたかなと。
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