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「鍵かけてないなんて、不用心だよ」 「普段開けられる事ねえんだから、かけねえっつの。いや、それより、なんで開けたんだ」 「ちょっと、思う所があって」 「は……?」 未だ状況が理解出来ていないのか、隆太は少しだけ眉を寄せて首を傾げた。 俺がここを開けた理由はまあ、ちょっと置いておくとして。 自分から開けておいてなんだけど、これはちょっと、危ないな。 付き合って一カ月半が経ったとはいえ、まだまだ見慣れない隆太の裸。 首から鎖骨にかけてのライン、薄っすらと割れた腹筋、肌に吸い付くように張り付いたタオル。 俺は隆太を頭の天辺から爪先にかけてゆっくりと視姦した後で、これはまずかったかな、と自然と目を逸らした。 なんと言うか、直視、出来ない。 隆太が頑なに一緒に風呂には入りたくないと拒んでいた意味が、なんとなく理解出来た気がする。 「太一、寒い。早くドア閉めろ」 「ああ、ごめん」 まだ洋服を着たままの俺は気付かなかったが、隆太は裸で、しかも浴槽に浸かっている訳ではないからこの状況はかなり寒かったみたいだ。 隆太は全身に鳥肌を立たせながらも、下から俺を睨んでくる。 俺はそれにごめんと謝って、風呂場へと足を踏み入れた。 後ろ手にドアを閉めて、反対の手で自分が着ているシャツのボタンへ手をかける。 「なっ……、おま、なんで入ってきてんだっ」 「だって閉めろって」 「お前は外に居ろよ。洋服だって、着たままじゃねえか」 「そんなの直ぐに脱げばいい。ねえ、俺も入っていいかな」 「は……ちょ、まっ……」 いつもは俺の方が先にお風呂に入るんだけど、今日はわざと隆太が先に入るように仕向けた。 つまりこれは、計画的な犯行なのだ。
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