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「お前、本当いい性格してる」 「そうかな」 「自覚なしかよ」 俺が身体を洗っていると、先に湯船に浸かった隆太がぼそりと呟いた。 達が悪いと言わんばかりに、不貞腐れた表情を見せて視線を逸らす。 でも、なんだかんだ言いつつ一緒に入ってくれるあたりが、ほんと、好き。 「隆太、俺も入るからもうちょっと詰めて」 「……っこれ以上、無理。足、そこに置くな」 「困ったな、思ったより狭いかも」 「そりゃ、男子高校生二人は流石にキツいって」 隆太と向かい合って浴槽に入ろうとしたが、思ったよりもキツかった。 何とか入るには入ったものの、俺と隆太の足はピッタリと密着して、もう既に身動ぎが取れない感じだ。 お互い、ちょっとでも動けば核心部に足が当たってしまいそうな程、危険な位置に足がある。 際どくて、肌が触れ合ってるからこそ、余計もどかしくて。 早々にどうにかなりそうだな、なんて思った。 お湯の温度は確か43度位の設定だった筈だ。この冬の季節に、この温度はそんなに高くない。 なのに俺が感じてる体感温度は、明らかに43度のそれとは違っていた。 「これで満足かよ」 「うん。これ、確かに危ないかも」 「だから、やめとけば良かったのに」 俺に念を押すように、隆太が知らねえぞと小さく漏らした。 ああ、確かに、これは俺が悪かったよ。 完全に、読みが甘かった。 お風呂に入っているからか、はたまた他の理由からかはわからないが、隆太の表情は心なしかとろんとしていて。 俺はその表情に、何とも言えない気持ちにさせられた。 赤く色付く頬に手を伸ばせば、少しだけ隆太の肩が跳ねた。 するりとなぞるように頬を撫でると、隆太の目が更に細められる。 危ない。 一瞬、誘われてるのかと思った。 ゆっくりと、包むように俺の手に重ねられた手は、尋常じゃない熱を帯びていて。 隆太の細い指先が俺の指に絡んで、ただそれだけなのに、まるでいけない事をしているみたいだ。 もっと、触れたい。近くで、見たい。 もっと。
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