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その後暫くは、お互いに無言。
俺は再び小説を読み始めて、佐々木もカバンから取り出した本を開いて読み始めたのだが、再び読み始めて数分という所で、俺の集中力は著しく低下した。
お互いに本を読んでいる間はいつも会話はしないから気にしなくてもいいんだろうけど、それでも気になる事が一つある。
俺は続きが気になっていた筈の本に渋々栞を挟んで、佐々木の方へ視線を向けた。
流石にその視線は、無視出来ない。
「佐々木」
「……なに」
「佐々木こそ、何」
俺が本を読んでいる間、何故か佐々木の視線は俺へと向けられていて。
視線に気付いた俺が佐々木の方を向くと、直ぐさまその視線は外される。
佐々木はどうやら本をまともに読んでいないらしく、ページは一向に進んでいない。
そして見て、見られてを三回も繰り返せば、何かあるとしか思えないだろう。
多くは語らなかったけど、何だと尋ねた言葉だけで何を言われているのか理解した佐々木は、少し考える素振りを見せた後ゆっくりと口を開いた。
「……あの、さ」
「うん」
「鍵本、次の土曜日とか……空いてるか」
佐々木は少し俯き気味のまま、俺にそれだけを告げた。
俺の居る場所からは佐々木の表情はわからないが、少しだけ声が上擦ったように聞こえた。
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