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佐々木の声も、目の動きも、呼吸音も。
これでもかってくらい近くに感じる。
「行くよ。原作ストーリーそのままだって聞いてたから、実は俺もちょっと気になってた。土曜日でいいのか」
「いい……けど、手、がっ……」
俺は佐々木へと手を伸ばし、金髪なのに妙にさらさらと手触りの良い髪を掻き上げて、露わになったおでこにそっと手を添えた。
俺の行動に驚いているのか、佐々木は目を泳がせて狼狽えた。
ていうか、やっぱり。
「あの……、鍵本……っ……」
「やっぱり顔赤いな。それに熱いし。さっきから様子おかしいなって思ってたんだ。風邪でも引いたか」
「……風、邪……いや、別に、風邪とか引いてねえし」
「でも、おでこ結構熱いよ。自覚症状無いのが一番怖いんだから、今日はもう帰るぞ。俺も一緒に帰るからさ」
おでこに付けていた手を当て、代わりに佐々木の腕を持つ。
力を入れてイスに座ったままの佐々木を立たせた俺は、急いで帰り支度を始めた。
しかし急いでる俺とは違い、佐々木は何故かその場から動かない。
「どうしたんだ」
「……あの、さ。土曜日……マジで来るよな」
「ああ、行くよ。だから風邪ならさっさと治せよ」
土曜日までは、あと数日あるから大丈夫だろう。咳もしてないみたいだし、息苦しそうでもないし。
近藤以外の奴と遊ぶ事なんて滅多にないから、誘われたのが純粋に嬉しくて、DVDとか関係なくちょっとだけ楽しみな自分が居る。
だから、早く風邪を治して欲しいんだけど。
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