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佐々木の家に入って直ぐ、リビングに招かれた。
リビングには大きなテレビと三人掛けのソファーがあって、適当に座ってくれという佐々木の言葉に甘えてソファーに腰を下ろす。
緊張からか、はたまた初めて来た場所に興奮してるのか、何だかソワソワして落ち着かない。
「お茶でいいか」
「あ、ああ。うん。ありがと」
ソファーの前のテーブルにクッキーと飲み物を用意して、佐々木は早速と言わんばかりにテレビを付けてDVDを再生させた。
「なんか、ドキドキする」
「俺も」
内容が原作通りに作られているというから、余計胸が高鳴る。
それは佐々木も同じようで、そわそわとしながら本編が始まるのを待っていた。
「このキャスティング豪華だよな」
「そうなのか。俺、あんまテレビとか観ないから」
「確かに鍵本って、本読んでるイメージしかないな。あ、この建物すげえな。マジで原作通りじゃん」
最初は他愛ない話をしながら、原作とここは同じだなとかここは違うとか言いながら鑑賞する。
けど中盤に差し掛かる時には、俺は既に食い入る様にテレビに噛り付いていて、気が付くと前のめりになっていた。
そんな態勢で30分位観入っていると、丁度映画が終盤に入る前辺りで隣から少しだけ笑う声が聞こえた。
隣をチラリと見れば、口元を手で押さえながら身体を震わせてる佐々木が視界に映る。
終いには、ぶはっと噴き出されてしまった。
「鍵本、がっつき過ぎ。俺も人の事言えねえけど」
「あ、ごめん。夢中になってた」
「なんか、鍵本らしいな。集中してたら周りが見えなくなるところとか、ホントお前らしいよ」
「っ、」
佐々木が不意に見せた屈託のない笑顔に、俺の意識は一瞬で奪われた。
テレビの音が、凄く遠くに聞こえる。
俺はまだ、佐々木から視線が、外せない。
「……もっと、笑えばいいのに」
自然と口から溢れたその言葉は、紛れもなく俺の本心だった。
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