158人が本棚に入れています
本棚に追加
風呂から上がって更に話し込んで、気が付いた時には夜中の2時を回っていた。
そろそろ寝ようかと言いつつ、敷いてもらった布団に潜り込む。
俺が横になったのを確認して、佐々木が部屋の電気を消してくれた。
佐々木がベッドに入っていく時の衣擦れの音を聞きながら、おやすみと声をかけた。
静まり返った部屋に、時計の秒針の音だけが響く。
真っ暗闇の中で目を閉じて眠りにつく筈だったのに、俺は何故か直ぐに寝付けなくて。
何か、違和感というか……何かを忘れてるような。
…………あれ……そう言えば、今日はキス……されてない気がする。
今日の事を思い出そうとしても、キスした場面は思い浮かばなくて。
違和感の正体は、多分、これだ。
会えば必ずと言っていい程されていたから、されなかった事に引っかかりを覚えたのだろう。
まあ、特にこれと言ってされる様な事もしてないんだけど。
佐々木が隣に居るのにキスしないのって、なんか、変な感じだ。
朝目が覚めたら、隣に佐々木の姿はなくて。
気怠い身体を起こして階段を降りると、キッチンに佐々木が立っていた。
おはようと言うと、佐々木がふわりと笑っておはようと返ってきたから、俺も笑顔を返して洗面所に向かった。
顔を洗ってキッチンに戻ると、佐々木がフライパンで目玉焼きを焼いていて。
何か手伝うよと声をかければ、じゃあ棚から皿を出してとお願いされた。
皿を渡した瞬間、柔らかい感触が俺の唇に触れて。
その瞬間、ふにっと、可愛らしい音がした。
いつも通り、唐突に奪われた。
まるで、呼吸をするように自然に。
でも俺は思う。
やっぱり、この方がしっくりくるな、と。
最初のコメントを投稿しよう!