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「太一、ここ、これで合ってるかな」
勉強を始めてから30分程が経過した。俺達は勉強道具を机の上に並べて各々勉強をしており、時折わからない問題があればお互いに質問しつつ黙々と進めている。
佐々木は数学に苦戦している様で、中々手が進まない。途中何度かこちらに視線を向けては、何も質問する事なくただボーッと見ていたりする。
わからなかったら、遠慮せず聞いてくれて構わないのに。
「佐々木、どこかわからない所あった?なんか、ボーッとしてたけど」
「……あー、えっと、腹減ったなって思ってただけ」
「なんだ、言ってくれれば飴あげたのに。気休めにしかならないだろうけどいる?」
「……貰う」
腹減った、と言う佐々木に返答を返した近藤はカバンの中から飴を取り出して佐々木に渡す。佐々木はそれを受け取って、ありがとうとお礼を言った。
「これ、美味しいな」
「そうなのっ、やっぱりレモンが一番だよねっ」
「ああ。俺もレモンが一番だな」
どうやら佐々木が貰ったのはレモン味の飴だったらしく、それを口に頬張ると同時に嬉しそうな声を上げた。
皆の集中力が途切れてしまったので、ちょっとだけ息抜きしようか。なんて言いながら手を止めて談笑する。
楽しそうに喋る二人を傍から眺めながら、不意にとある疑問が浮かんだ。
近藤から飴を受け取った佐々木は、近藤にもお礼と言ってキスをするんだろうか。
俺が佐々木からされてるキスは、多分、何かしらのお礼の類だと思う。だからもしかして、なんて、唐突にそんな事を思った。
佐々木が、近藤に、とか。
いや、そんな事ないよな。飴を貰ったくらいで。
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