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6月上旬 季節は夏だが、衣替えしたばかりの半袖の制服はまだ寒い。学校指定のベストを上に着用している生徒の方が多いのではないかと思う。 そんな生徒達が行き交う廊下を抜け、俺と近藤は昼食を食べる為に学食に来ていた。 既に大半の生徒達は自分の昼飯を買い終えて各々席に座って食べている。 しまった、出遅れた。学食の席はあっという間に埋まってしまうから、少しでも出遅れたら座れなくなる。 辺りを見回して空いている席を探していると、食券の自販機前に見慣れた姿を見つけた。 見慣れた後ろ姿と、目立つ金髪。本当、どこに居たって見付けやすい。 「佐々木が居る」 「あ、本当だ。一人かな。声かけてみよっか」 席を探す事をやめ、俺と近藤は佐々木の方へと歩き出す。佐々木は一人で食券を買っており、丁度カウンターの方へと歩いていく所だった。 「佐々木君もお昼?」 「……っ鍵本、と、近藤」 「よう。佐々木は何食べるんだ」 俺と近藤が背後から話しかけると、その事に驚いたのか佐々木の肩がビクッと跳ねた。振り向いた佐々木の表情も、声をかけられた事に正に驚いているといった表情だ。 俺が食券は何を買ったんだと聞けば、佐々木はおずおずとこちらに食券を向けてくれた。 カレーライスか。 「俺もカレーにしようかな」 「僕は日替わりにしよっと」 食券の自販機が空いてる事をいい事に、俺と近藤は急いで食券を買いに行く。直ぐに買って来るからと言えば、佐々木は首を縦に頷き側で待っていてくれた。 「そうだ。なあ、佐々木も一緒に食わないか」 料理を待っている間に、俺は佐々木に一緒に食わないかと誘った。近藤も同じ事を思っていたのか、後ろからうんうんと頷いている。 別々のクラスだと約束でもしない限り昼飯を一緒に食べる事もないだろう。だから、折角だし。そう言葉を続けると、佐々木は申し訳なさそうに視線を外した。
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