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「あ、あー、いや……その、友達と食べる約束してるから……ごめん」
自分の頼んだカレーライスとは別にトンカツの乗った皿をトレーに載せた佐々木は、もう一人が席を取ってくれているのだと言った。
恐らく、トンカツ定食はもう一人の物だろう。
ーー友達と約束してるから
その言葉が、何故か頭の中でリピートされる。
……ズキッ
「……そっか。それなら仕方ないな」
そっか…………友達、か。
そう言えば俺、放課後以外の佐々木の事、全然知らない。
クラスでどんな風に過ごしているのかとか、誰と飯食ってるだとか、俺以外の友達の事とか。
何一つ知らないくせに、俺今、佐々木とご飯一緒に食べる気満々だった。
「じゃあ、待たせてるから。また放課後な」
「あっ、佐々木君ちょっと待ってっ」
焦った声が、佐々木を引き止める。振り返った佐々木は、頭に疑問符を抱えて首を傾げた。
「その友達ってもしかして、倉持君かなあ」
「ん、ああ。そうだけど」
「やっぱりっ!ねえ、よかったら倉持君も誘って4人で一緒に食べない?」
近藤の言う倉持(くらもち)って、去年同じクラスだったあの倉持か。
確か、前に佐々木が由乃(よしの)って呼んでた覚えがある。そのとんかつ定食は、倉持のって事か。
「折角だし、皆で仲良く食べようよ」
「じゃあ由乃に聞いてみる。多分いいって言うだろうけど、一応な」
席も丁度二つ空いてるからと、佐々木が倉持の居る場所を見やった。
「本当!?」
「ああ」
佐々木の言葉に笑顔でありがとうと言った近藤。
普段二人で食べてるから、皆で食べれるのが嬉しいんだろうか。
そして嬉しそうに笑う近藤にあてられたのか、佐々木も小さな笑顔を見せた。
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