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今日もいつも通り第二図書室に訪れた俺は、室内を見渡して少しだけ驚いた。 珍しい、今日は三人も居る。 普通で言ったら少ないんだろうけど、ここにすればこれでも多い方。 珍しい事もあるものだと、感嘆の溜息を漏らしカウンター内に入る。 カバンの中から昨日借りた小説を取り出し、定位置と呼べるイスに座った俺は、ペラペラとページをめくり挟んだ栞を机に置いた。 それから程なくして、一週間前に大量に本を借りて行った先生がまとめて本を返しに来た。 本の貸し出しカードに返却の判を押してそれを受け取った俺は、丁度読んでいた小説も切りがいいからと席を立つ。 先程返ってきた本を、カテゴリ別に分かれた棚へ一つ一つ戻していく。 さっきの先生は、どの教科の担当だっただろうか。多趣味と言ってもいい位に、本の趣味がバラバラだ。 料理、推理、宇宙 謎を呼ぶ組み合わせ。 最後の宇宙工学の本を戻せば、今日の仕事は終わりと言っても過言ではないだろうか。それ程までに、ここでの仕事は少ない。 この図書室では借りていく人は殆ど居ない。読んで行く人は居るが、借りるとなるとまたここまで返しに来なければいけないからだ。 ここはとても落ち着くし、静かで勉強にも最適で俺はお勧めなんだけどな。なんて常々思っている。 第一図書室も静かではあるけれど、やはり人が多いから集中力を削がれてしまう。 俺がここを見つけた時は、飛ぶように喜んだというのに。
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