3

13/28
前へ
/188ページ
次へ
「何を……やってるんだ」 食べ始めて早々、佐々木が俺の目の前で妙な行動をとっている。それに純粋な疑問を抱いた俺は、自然と声を上げていた。 不思議そうに佐々木の行動を見ているのは近藤も同じ様で、箸を止めてまじまじとその光景を見つめている。 「何って、隆太福神漬け食べられないんだよ。だからカレー頼んだ時はいつも俺が食ってんの」 俺の質問に答えてくれたのは倉持だった。 現在俺の目の前では、佐々木がカレーライスが入っている皿から、福神漬けだけを倉持の前にある皿に移している光景が繰り広げられている。 倉持もトンカツが乗った皿に福神漬けが乗せられていくのに全く動じない。まるで、いつもの事だと言わんばかりだ。 「二人とも仲良いねえ」 「別に、普通じゃねーの」 近藤の言葉に返答をしたのはまたしても倉持だった。佐々木もそれに頷いている。 逆に、近藤の質問に不思議そうに首を傾げる程だ。 これが、二人にとっては普通の事。 そっか、これが佐々木の日常なのか。 俺の知らない、佐々木の新たな一面。 放課後以外の佐々木の日常が垣間見えて本当は嬉しい筈なのに、なんだろう。嬉しいとは、ちょっと違う。 俺は自分のカレーライスをスプーンですくい上げると、そのまま口に運んだ。そしてさも当然の様に倉持が食べている皿に移される福神漬けを見ながら思う。 折角同じカレーライス食べてるんだから、俺にくれたら良かったのに。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加