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「じゃあ、慣れればいいんだよな。呼ばれるの自体は嫌じゃないんだろ」
「なっ……それはっ、そうだけど」
「それなら、俺の事も太一って呼んでよ。ほら」
「っ……鍵本って、案外強引なとこあるよな」
「鍵本じゃなくてさ」
「…………」
「もしかして、恥ずかしいとか」
「あーっ、もう、わかった。今呼ぶから待ってろ」
覚えてろよ。なんて言われた所で、耳まで真っ赤になってる姿で言われても全然怖くない。
佐々木がゆっくりと首を横に傾ける。それをレンズ越しに眺めながら、何となく、キスされる気がして目を閉じた。
直ぐそこに感じる息遣い。触れた肌から伝わる熱が、俺の体温を上昇させる。
「………太一」
この時初めて、キスをするのに、眼鏡が邪魔だなって思った。
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