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最後の宇宙工学の棚に辿り着いた俺は、順番通りに並べられた棚を確認して本の置き場所を探した。 上から二段目の棚に、その本があったであろう隙間。シリーズ二作品が丁度入る隙間を見付けた俺は、間違いないかを確認して一冊目を棚に入れた。 そして二冊目、という所で、入れたばかりの一冊目は呆気なく引き抜かれた。 突如として横から伸びて来た手に、驚いて横に目を向ける。そこには、おおよそこの場には似つかわしくない金髪の少年が立っていた。 身長は俺と同じ位だから175cmは越えてるんじゃないかな。 恐らく染めたであろう金色の髪をそよ風に靡かせて、その少年は本から俺の方へと目線を向けた。 細い目が、少しだけ見開かれた。俺はその行動に首を傾げつつ、そういえばと思う。 こいつは、去年同じクラスだった佐々木だ。不良という訳ではないが、よく授業をサボっている印象。何よりも金髪が目立つ。 校則違反のノーネクタイと、着崩した制服。あまり笑わないせいか、近寄り難い雰囲気を醸し出している。 俺も独りが好きなせいか別の意味で近寄り難いとは言われるけれど、とにかくそんな佐々木がここに居る事自体が不思議だ。
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