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「隆太、そろそろ起きろってば」 「ん……ぅ…………」 「寝るならベッドで寝てよ」 「……ん、あれ……太一……」 俺がもう一度身体を揺さぶれば、ようやく意識が浮上したのか、隆太が定まらない視点で辺りを見回した。 俺の姿を確認した瞬間状況を理解したらしく、しまったといった表情を見せた。 「……悪い、ちょっと寝てた」 「全然いいよ。眠いなら今日はもう寝るか。明日も時間たっぷりあるし」 「んー、そうだな」 身体を起こしながら、隆太は俺の提案に頷いた。一応起きてはくれたけど、まだまだ眠たそうだ。 「それじゃあ……」 もう寝ようかと言葉を続けようとした瞬間、こちらに伸びてきた腕。俺は頭をグッと掴まれ、そのまま隆太の方へ引き寄せられた。 「んっ」 呼吸する暇も与えられないまま、強く押し当てられた唇。二人を包む空気に、少しの甘さが混じる。 この間隆太は俺の事を強引だと言ったけれど、隆太だって、時々驚く程強引だ。 でもそれが嫌だとは、一度も思った事はない。 キスされた瞬間、ああ、これだって思った。やっぱりこれがないと、どうにも物足りなくて、寂しくて、落ち着かなくて。 でもすればたちまち満たされる。 俺、やっぱりキス、されたかったのかな。 「もう一回」 焦ったさが滲むその声に、心臓が大きく脈を打つ。 この胸の高鳴りが示すものを、俺はまだ知らない。
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