3

24/28
前へ
/188ページ
次へ
日中、隆太が最近ハマってるというテレビゲームをして遊んだ。 二人で出来るシューティング系のゲーム。隆太に操作方法を聞きながら、出されたミッションをこなしていく。 途中で昼飯を近くのコンビニへ買いに行って、食べた後はまた、ゲームの続きをやった。 ゲームがことの外面白かった俺は、いつの間にか夢中になりゲームに没頭していた。 「お邪魔しました」 夕方になり、そろそろ帰るよと言って持ってきた着替えや荷物をカバンに詰めた。 玄関で靴を履いて、振り返る。駅まで送ろうかと言われたが、もう直ぐ隆太の弟君が帰ってくる頃だと言っていたので、大丈夫だよと返答した。 靴も履いたし、カバンも持った。けど俺の足は、その場から動かない。 なんか、名残惜しいな。 楽しかったから、余計に。 休みをフルに使って遊びまくった筈なのに、なんだろう。まだ遊び足りないっていうか、帰りたくないっていうか。 明日だって、また学校で会えるのに。 「それじゃあな」 「……」 「太一?」 一向に動かない俺に、不思議そうな声がかかる。そのまま顔を覗き込まれて、目の前には隆太のドアップ。心臓が、小さく跳ねた。 そうだ。あれをまだ、してない。あの、いつものやつ。 隆太から何かしてくる気配はない。今日はしてないのに。 だから俺は。 「隆太」 一度名前を呼んで、眼鏡を外して。 しやすいように、少しだけ顔を傾けて。 瞳を閉じた。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加