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隆太は俺からの言葉を待っている。 二人の間の沈黙は、数十秒、或いは数分続いただろうか。静かなのがこんなにも怖いと思ったのは、初めてだ。 何かのお礼のキスとかにすれば、隆太は納得するんだろうか。 ふと、そんな考えが頭を過る。 俺はキスが日常になるまで、ずっと隆太からされるキスを何かのお礼だと思っていた。 だからこれも、お礼のキスであると言えば、隆太は納得するんじゃないのか。 「お礼のキス、かな。泊めてくれてありがとう……みたいな?」 歯切れ悪く、そう返答した。 その語尾が疑問系になったのは、どこかでそれを間違いだと思う気持ちがあったから。 ああ、なんでだろ。凄く、手が震えてる。
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