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「ねえ」
佐々木が隣に居た俺に話しかけてきた。
しかし既に佐々木から視線を外していた俺は、最初の声かけに気付かなかった。
「ねえ、鍵本」
突然名前を呼ばれて、ハッとなった。
今まで同じ教室に居ても、名前を呼ばれた事なんてなかったのに。
ちょっと、ビックリしたんだけど。
「何?」
「それ、この本の続き?」
「ああ、そうだよ。これも読むのか?」
佐々木が手にしていた本の、続きは俺の手の中にあった。だからこそ佐々木は話しかけてきたようだ。
宇宙に興味があるのかな。なんて疑問符を頭に浮かべながらも、ほら、と言って手にしていた本を渡す。
佐々木が受け取った時、少しだけ俺の指に佐々木の指が当たって。次の瞬間には、何故か、俺の唇にも何かが触れた感触があって。
ちゅっ、と可愛らしい音が鳴った気がした。でも一瞬だった。俺の唇が、佐々木の唇と触れ合ったのは。
とりあえず、俺は固まった。
だって、直ぐに理解出来るような出来事じゃなかったから。
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