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ごめん、ごめん、ごめん。 そう心の中で何度も謝りながら、ポケットから携帯電話を取り出した。震える手をそのままに、何度も文字を打っては消してを繰り返す。 数十分をかけ、ようやく送信ボタンを押した。送信されたのを確認して、やっと普通に呼吸が出来た。 今更、気付くなんて。 俺の中の隆太の存在は、自分で思ってるよりもずっと大きくなっていた。たった二ケ月だろうが、もう、隆太は俺の特別なんだ。 俺にとって隆太が特別な存在だから、俺も隆太の特別になりたい。 こんなにも会いたい気持ちになったのは、初めてだった。こんなにも、キスしたいと思ったのも。 キスフレ。友達以上、恋人未満の関係。一際目を引くネットの見出し。 友達以上。その文字が頭の中でグルグル廻る。 俺達は友達。キスをする、友達。だから安易に、隆太との関係をキスフレと名付けていた。 でもそれは俺の中だけだ。今のこの状況下では、俺の中ですら、その名前を付ける事が出来なくて。 ただ、キスフレというのが、名前ある関係性に当て嵌まらない、枠に嵌らない感じがして、凄く特別な関係のように思えた。 隆太の、特別になれるなら。 そうなりたいと、切に願った。 隆太と会えなくなって五日目の放課後、俺以外の奴が、第二図書室のドアを開けた。 「……来てくれないかと思った」 「あんなメール寄越されたら、来るしかねえだろ」 「…………うん。ごめん」 ごめん。嬉しい。ごめん。 姿を見ただけで、涙が溢れそうになった。 込み上げてくる感情に付ける名前は、まだ無い。
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