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『話がしたい。明日の放課後、来てくれるまで待ってる』 悩んだ末に送った文章。場所すら書いてない、端的で、簡単な文章だった。 どうしても隆太に会いたかった。強引でも、自分勝手でも、他にいい方法が思い付かなかった。 このまま会えなくなるのは、嫌だったから。 「入って来ないの」 「……」 隆太はドアの向こう側に立ったまま、中へ入って来ようとはしなかった。 入ってきなよと声をかけると、隆太がグッと握り拳を作って視線を逸らす。 そのまま待っていると、隆太は観念したように小さく息を吐いて、室内に足を踏み入れた。後手にドアを閉めて、一歩、二歩と歩みを進める。 俺はカウンターから出て、入り口近くに居る隆太の所までやってきた。互いの距離は、50㎝といったところか。 暫くは、互いに沈黙が続いた。先に静寂を破ったのは、俺の方だった。
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