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「や、やめろっ……!離せっ……」 隆太が俺の腕の中で、拘束から逃れようと必死に抵抗する。背中を強く叩いてきたり、引き剥がそうとしたり。有りっ丈の力で俺から離れようとしてきた。 「どうして逃げようとするんだ」 今離したら隆太が逃げてしまいそうで、俺は離さないと言わんばかりに拘束の手を緩めない。 ここで逃したらダメだ。今逃したら、絶対後悔する。 「だってっ……!お前も、もしかしたら俺と同じなんじゃないかって思ってたんだっ。キスした時抵抗しなかったし、気持ち悪がる様子なかったしっ……」 これを境に、堰を切ったように隆太の口からはどんどん言葉が溢れ出す。背中を叩く手は、いつしか縋るみたいにして俺のシャツを掴んでいて。 「でも違うんだろっ……!お前は俺のキスをお礼のキスだと思ってたから受け入れてただけなんだろっ……」 違うんだと言って、何度も首を横に震る。今度は引き剥がそうとするのではなく、身体を押し返してきた。とても弱々しい力で。 「違う。俺のキスと、お前のは、違うんだよっ……」 心の奥底から絞り出された言葉が、鼓膜を大きく揺らした。それは、声が直接頭に響いてくる感覚だった。
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