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その声に、少しだけ、冷静を取り戻す自分がいた。 隆太が理由もなく避けてるとは思ってなかった。これが多分、その答えだ。 「ねえ、違うって、何のこと。それが同じならいいの?」 「言えるかよっ……!こんなの、言えねえってっ……」 語尾になるにつれ、その言葉は弱くか細くなっていく。俺の耳にも、聞こえるか聞こえないかの音量で紡がれる言葉たち。 「おかしいんだよ、普通に考えたら。あり得ねえんだ。友達同士で、男同士でキスなんて」 痛い程に、心に届く。息苦しいのに、唾を飲み込むのもやっとなのに、隆太の本音が、隆太の心に触れられた事がどうしようもなく嬉しくて。 「でも俺、今更太一から離れるとかっ、考えらんねえのにっ……どうしたらっ……」 心臓が一度大きな音を立て、全身が震えるのがわかった。多分これが、俺の一番聞きたかった言葉だったからだろう。 悲痛にも似た叫びに、また、泣いているのかと思った。泣いているなら、涙を拭いたいと思った。 隆太の身体が足元から崩れ落ちそうになって、俺はそれを全身で受け止める。 隆太がどうしてそんな風に思ったのかは、結局何もわかってない。ただ一つ言える事は、俺も隆太も、恐らく考えてる事は同じなんだってこと。
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