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返答は、返ってこなかった。 ただ、隆太が小さく頷いたのはわかった。 暫くの間を置いて、隆太がそっと唇を開いた。 「……最後にもう一回聞くけどさ」 「なに?」 「本当に、いいのか。これからもキス、して」 「うん。いいよ」 俺の返答を聞いた隆太はその場で蹲り、はーっと、盛大な溜息を漏らした。 髪の毛をワシャワシャと掻き回して、徐に一言。 「お前……強えな……」 それはどこか呆れた声だった。 その後、降参だと言わんばかりに苦笑されて、でもその表情は心なしか晴れやかで。 強いと言われて、意味がわからず首を横に傾ける。隆太はどこかばつが悪そうにそっぽを向いた。 「あーっ、あのさ、していいか」 「今?」 「今」 何をと言われなくても、それが指すものは直ぐにわかった。蹲ってた隆太がいきなり立ち上がったかと思えば、俺の視界はあっという間に奪われる。 「んっ……」 触れた瞬間、心臓がドクンと鳴り鼓動を速める。体温が上昇したのが、自分でもわかった。 やっと、やっとだ。 隆太からのキス。ずっと、して欲しくて堪らなかった。 さっきもキスしたけど、本当に無意識だったから、このキスの方が深みがあるというか。 隆太の意思で触れてくれたのが、嬉しくて堪らない。嬉しさが隠せない。心臓の音、煩い。 あ、ヤバい、なんか、ヤバい。 何がヤバいのかもよくわかんないけど、とにかく心の中でそう思った。 ゆっくりと唇を離すと、そっと目を開けた隆太と視線が交わる。キスをした後で、隆太が俺の眼鏡を外した。 目がかなり悪い俺の視界はぼやけてて、周りの景色は殆ど見えてない。けど、隆太の顔だけはよく見える。 「……ん、」 瞬間、二人を包む空気が一気に柔らかく、蜜を混ぜたみたいに甘やかになる。 さっきよりも更に鼓動の音が大きくなった。この心臓の音は、俺だけのものなんだろうか。 唇が、離れては、またくっ付いて。 ああ、これは、本当にヤバいな。 キスフレ。友達以上、恋人未満。 ーー始まりの音は、まだしない。
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