4

20/21
前へ
/188ページ
次へ
キスフレになって、変わらない事。 放課後、穏やかに流れる時間。座る場所。カウンター越しの、絶妙な距離感。静けさ。 キスフレになって、変わった事。 キスをする上で、合意を求められるようになった、こと。 「太一、キス」 俺がキスフレになろうと言って以降、隆太はキスをする前に、俺の意思を確認するようになった。 小説を読んでいた筈の隆太が徐に立ったと思ったら、そのままカウンターの中に入って来て。俺の真横に立って、ぶっきらぼうに”キス”とだけ言った。 俺は眼鏡を外して、そっと瞼を閉じる。これがキスの合図。 隆太の手が俺の首元に添えられて、目を瞑っていた俺は突然訪れたそれにびくりと身体を反応させた。 そのまま顎を持ち上げられて、多分親指だろう、ゆっくりと丁寧に下唇をなぞられて。 隆太の吐息も、熱も、直ぐそばに感じるのに、キスをされるまでの間、待ってるこの数秒がもどかしくて。 早く、って思った。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加