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キスフレになって、変わらない事。
放課後、穏やかに流れる時間。座る場所。カウンター越しの、絶妙な距離感。静けさ。
キスフレになって、変わった事。
キスをする上で、合意を求められるようになった、こと。
「太一、キス」
俺がキスフレになろうと言って以降、隆太はキスをする前に、俺の意思を確認するようになった。
小説を読んでいた筈の隆太が徐に立ったと思ったら、そのままカウンターの中に入って来て。俺の真横に立って、ぶっきらぼうに”キス”とだけ言った。
俺は眼鏡を外して、そっと瞼を閉じる。これがキスの合図。
隆太の手が俺の首元に添えられて、目を瞑っていた俺は突然訪れたそれにびくりと身体を反応させた。
そのまま顎を持ち上げられて、多分親指だろう、ゆっくりと丁寧に下唇をなぞられて。
隆太の吐息も、熱も、直ぐそばに感じるのに、キスをされるまでの間、待ってるこの数秒がもどかしくて。
早く、って思った。
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