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「……んっ……」 ふわふわとした、優しいキス。 それは直ぐに離れていったけど、触れた部分に、小さな余韻が残る。 今まで唐突に奪われてばかりだったのに、こんな風に聞かれてからするのは、なんか変な感じだ。 今からされるってわかってると、妙に緊張する。身体に、変な力が入る。 でもそれより問題なのは、待つという行為に内心、ほんの少しの焦ったさを感じているって事で。 キスしていいかって、聞いてくる時間すら勿体ないっていうか。 早くしろとか、思ってしまうのが恥ずかしいし、俺だけ焦ってる気がしてなんか悔しいし。 ……のも、嫌いじゃないのに。 考え事をしているのが表情に出てしまったのか、俺の表情を見て隆太が眉を寄せる。それから不貞腐れたように、むすっとした表情を見せた。 「なんだよ」 「いや、今までする前に言われる事なかったから、変な感じだなって思ってさ」 「なに、許可とんなくてもいいの?」 「……いいよ。許可取られると、逆に恥ずかしいし……ん、ぅっ……!」 隆太は俺の返答を最後まで聞かなかった。さっきより力強くて、強引。合意を求めない、荒っぽいキス。 鋭い視線が、胸を刺す。目を合わせていられなくて視線を逸らしたけど、逸らしても尚、その視線は俺の胸を貫いてきた。 あー、うん。これだ。いつものやつ。 やっぱり、強引なのも、嫌いじゃない。
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