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掃除を始めて数時間後には、二人ともバテバテになった。
「しかし、経った一ヶ月半で埃って結構溜まるよな」
「隆太、棚は終わりそう?」
「明日までにってのは無理じゃねえ?この部屋狭いくせに、予想以上に本あったし。てか、太一はこだわり過ぎんだよ。窓拭きに何時間かかってんだ」
「だって、汚れが気になって。気がついたら夢中になってたんだよ」
この部屋を一日で綺麗に、というのは流石に考えてなかったが、この調子だと明日で終わる気もしない。
掃除の基本と言いつつ上の方から掃除をしてたら、いつの間にか窓拭きに集中してた。今日は多分窓拭きしかしてなかった気がする。
愛着がある場所なせいか、どうしても綺麗にしたくて。
その事を隆太に伝えれば、ふわりと、まるで息をするように自然にキスされた。
ああ、この場所でするのも久々だ。と、ぼんやりと思う。
「お前のそういうとこ、なんかいいよな。場所とか、物とか、大切に扱ってる感じ」
「……そうかな。そんな事、初めて言われた」
打算も計算もない、素直で綺麗な言葉。
本心から思ってくれてるのが、声音でよくわかる。隆太は時々、驚く程に優しい声で喋るんだ。
嬉しいと、心が叫ぶ。それを音には、簡単に出来なかったけれど。
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