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「……でも、ここからの景色、結構好きなんだよな」 別に人なんて滅多に来ないんだから、今日だってこうして、わざわざカウンター内に入る必要なんてないんだろう。 それでも俺がここに座ってるのは、ここからの景色を気に入ってるからだ。 落としていた視線を上げればいつだって、隆太が当たり前のようにそこに居た。 それが自分の生活の一部になっているから余計、俺は久しぶりに座ってみて変わらない景色がそこにある事が嬉しかった。 小さく漏れたその声は、どうやら隆太の耳に届いていたらしい。隆太が、目を見開いたのが視界に映った。 「なあ」 「なに」 「そっち行っていいか」 そっちに行っていいかと聞かれたから、うんと言って頷いた。 隆太は席を立って、カウンターの扉を開けて入ってきた。 近付く気配。ほんの少しだけ、体感温度が上がった気がした。 隆太の存在を直ぐ側に感じる。このままキスされるんだろうなって思った俺は、さも当然のように顔を上げる。 カサついた手が、俺の頬に触れた。
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