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「キス、したいんだけど」 「……どうぞ?」 キスしたいと言われたのは、恐らく一学期の終わり以来だろう。かれこれ、一ヶ月半は前の話だ。 本当に久しぶりだったから、言われた事に驚いて返答が遅くなる。 特に最近は、キスして欲しいって思った瞬間には既に、唇が触れ合ってる事が多かったから。 どうぞと言って、隆太からのキスを待つ。 でも何故か、隆太は直ぐに唇を寄せては来なくて。 どうしたんだろうと首を傾げると、隆太はどこかばつが悪そうに視線を外した。 「いや……あのさ」 「別に、する前に聞かなくてもいいよ」 「そうじゃなくて、眼鏡、外して。それから……目、閉じて」 ああ、と思い出したように眼鏡を外そうと徐に右手を上げる。 しかし眼鏡を外そうとした右手は、何故か隆太に掴まれて。 俺が身に付けていた眼鏡は、隆太の手によってあっさりと奪われた。 焦ったい、と言わんばかりに。
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