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「あっ、そうだっ」 隣に居る近藤が、図書室と言えば、と突然大きな声を上げた。 「ねえねえ、今度部活の休みがあったらさ、図書室に遊びに行ってもいいかなあ?うるさくしないようにするし」 「……ん?なんだ、珍しいな。どういう心境だ」 そう言えば近藤との付き合いは一年にもなるというのに、図書室に遊びに来た記憶はない。 こいつは部活馬鹿で、卓球部に所属している。 俺達が通う学校は卓球部がそこそこ強い。卓球部では療養と健康管理も必要とされており、毎週土曜日がお休み。だからこそ平日に卓球部がお休みになる事など滅多にない。 そして近藤は今伸び盛りらしく、結構期待されているのだと噂で聞いた事があった。期待されている分、こいつは応えようと努力している。 ここ一年で卓球の腕だけじゃなく身長も伸びてきていて、最近女の子の間でも人気なんだとか。 確かに去年入学した時はまだ165cm位だった身長も、今は173cmだと身体測定の時に言っていた。 でも近藤は部活が休みの日だって欠かさずトレーニングしてるくせに、一体どういう風の吹き回しなんだ。 俺が疑問に思ってるのが顔からも予想出来たのか、近藤はクスクスと笑いながら返答を返してきた。 「だってさ、ダーリンのお気に入りの場所でしょ。一度お目にかかりたいなって思ってさ」 「ふーん、まあ、静かにするなら良いんじゃないのか」 「やったっ、ダーリン愛してる」 「あー、はいはい」 「なんか冷たいっ」 お前に優しくしてどうするんだと思ったが、とりあえず口には出さなかった。
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