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隆太の頭にそっと手を伸ばして、ぐしゃりと一撫でした。 されるがまま何も抵抗しない隆太に、俺は調子に乗って更に撫で続けた。 隆太の髪は指通りが良くて、撫でる度に香る仄かなシャンプーの香りがとても心地良い。 名残惜しくなり隆太の頭から手が離せずにいると、隆太はゆっくりと俺の方に身体を傾けてきた。 俺の肩にぼふっと音を立てて顔を埋めて、仕方ないといった溜息を漏らす。 「当日回れねえのは仕方ねえけど、内申書上がんだろ。頑張れよ」 「うん。ありがと」 「あー、でも、その間第二図書室はどうすんだ」 「ああ、それなら心配ないよ。文化祭準備期間は開けなくていいって言われてるし……でも、隆太はどうする?」 先生は隆太も俺と同じく第二図書室に通ってる事を知ってるから、恐らく鍵を貸してくれるだろう。 隆太が望めば、第二図書室を自由に使用する許可が下りる筈だ。 俺は帰るのが遅くなるだろうし、多分一緒には帰れない。 未だ俺の肩に顔を埋める隆太にそれを伝えれば、隆太は少し思案した後にゆっくりと顔を上げた。 「まあ、その件についてはゆっくり考えてみる。それより……さ」 「ん?」 「暫くの間、思うように会えなくなるなら、ちょっと頼みがあんだけど」 不意に、頭を撫でていた手を取られる。隆太はそのまま俺の顔を覗き込んできて、真っ黒な瞳に俺を映した。 「太一から、キス、してくんねえ?」
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