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「……何小説読み始めてんだ」 「え?」 飲み物を持ってくるという隆太より先に隆太の部屋に入った俺は、荷物を置いて直ぐにカバンの中から小説を取り出した。 読み始めて直ぐに隆太が二階に上がってきて、開けておいたドアから顔を出す。入ってきた瞬間、隆太は俺の様子を見て盛大に溜息を漏らした。 「あれ、ダメだったかな」 「いや……別に良いんだけどさ。折角久々に会ったんだから、なんかもっと……」 「もっとって、何かしたい事あった?」 隆太の家に来ても、いつも二人して小説読んでたりするから今日もその感覚でいたんだけど。なんだろう。二人でゲームでもしたかったとかかな。 俺が不思議に思い首を傾げれば、そういう意味じゃねえんだけどと隆太が小さく呟いて、拗ねたように唇を尖らせた。 テーブルにお茶の乗ったおぼんを置いた後、俺の隣に座り開いたばかりの小説を覗き込む。 「あとどのくらいで読み終わる」 「まだ読み始めたばっかりだからわかんないかな。もしかしてゲームでもしたかったのか」 「いや、その、小説読み終わるまでの間がなんつーか……な。俺暇になんじゃん」 「うん?」 「……っ、いい加減察しろよ。小説読み終わるまで、俺は待ちきれねえの」 隆太は焦れたように俺の肩を抱き寄せた。突然だったから正直戸惑ったけど、待ちきれないと言われた事が妙に嬉しくなり小説にしおりを挟む。 なんだ、そんなに一緒に遊びたかったのか。
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