何も言わない

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すっと少年が棒アイスを差し出す。 「ありがと」 笑顔で少女はそれを受け取る。少年はただ無言で頷き、自身のアイスを舐めるだけだ。その視線は空を見上げていた。 「今日も青いねえ。暑いねえ」 少女の言葉にただ頷く少年。それから無言でハンカチを差し出す。少女もそれを無言で受け取り、汗を拭う。 少年は昔からこうだった。何も話さない、ただ無言で手を差し出してくる。少女はその少年の行動を慣れていた。何も言わずとも、少年が自分に気付かっていることがわかっているから。 ニャア、と一匹の猫が脇を通り過ぎる。少女は笑顔で、少年はやはり無言で、それを見送った。 二人はただ無言で、始まったばかりの夏の空の下、それを見上げた。
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