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「叶多」
学校からの帰り道、駅構内を出たとたん、呼びとめられた。
声のしたほうを向くと、見慣れた車が道路脇に止まっている。
「戒斗!」
叶多は駆け寄って、開いた助手席の窓から車のなかを覗きこんだ。
「乗れよ」
「どこ行くの?」
「崇さんとこ。お祭りだから来ないかって」
「あ、今日二十七日!」
叶多が助手席に納まったのを確認して戒斗は車を出した。
「叶多が来ないから痺れ切らしてるんだろ」
試験が終わった土日は、戒斗が有吏の用事で昼間中不在だったこともあり、それまで気が張っていた反動で、叶多は伸びきったゴムみたいに家でぼうっとしていた。
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