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戒斗がいつもに戻ってほっとしたのと自分の浅はかさに叶多は吐息を漏らす。
「あたし、人間不信になりそう」
戒斗は小さく声に出して笑うとちょうど赤信号で止まり、叶多の頭の後ろに手をまわした。
「あいつらと違って、少なくとも、おれは叶多のことを考えたすえのことだし、不信の対象にはならないはずだ」
戒斗は『あいつら』が何を考えたのか見当をつけたらしい。
叶多は頭を引き寄せられ、同時に戒斗の顔も近づいてふたりのくちびるが触れた。
戒斗が離れ、叶多が瞬間的に閉じていた目を開けると、そうだろ? とすぐ傍から問いかけるような眼差しが注がれる。
返した笑顔に答えを見つけた戒斗は口を歪めて、またまえに向き直った。
たかに着くと、戒斗が言うところの〝痺れを切らしている〟わりにはあっさりと崇に迎えられた。
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