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「ペットを飼いたい願望が強すぎて、こうなっちゃったのかしら。こんなことなら、私が我慢して、飼ってあげればよかった。」
母はそう言って自分を責めた。
いずれにしても、このマンションに住む限り絶対にかなわないことだった。
両親は、マユのために、引越しも考え始めた。
一戸建てなら、ペットを飼うこともできるし、もっと良い環境の場所に住めば、マユの病気が治ると思ったのだ。
しばらくすると、マユは、せっかく買った鳥かごを捨てた。
「ピーちゃん、大きくなりすぎて、もうカゴに入らなくなっちゃったから、ベランダで飼うね?」
そう母に言ったそうだ。一向に妄想が治らないマユに、家族は疲弊していった。
幼稚園の友人にも、ピーちゃんを見せると言って連れてきても、居るはずもないピーちゃんを居るといい張るマユは、嘘つきだと言って泣かされた。
どうしてこんなことになっちゃったんだろ。
僕達は疲れ果てて、ついに母まで倒れてしまった。
母は入院してしまい、それでもなお、マユはピーちゃんピーちゃんとまるで憑かれたかのように、世話をした。毎日のように、冷蔵庫のものを、ベランダへと運ぶ。
不思議なことだが、その餌と称してベランダに運んだものは、綺麗になくなっていた。
マユが食べているのだろうか。しかし、生肉だったり、生魚だったり、とうてい調理しないと食べれないものまで、綺麗になくなっている。ゴミ箱も見たが、捨ててある形跡は無い。
そして、ある日、僕は見てしまった。
姿の無い、ピーちゃんが、捕食するところを。
その日、マユは体調を崩してしまい、熱を出して、床に臥せっていた。
「お兄ちゃん、ちゃんとピーちゃんに餌、あげてよ?」
そう言われ、もう否定するのも面倒だし、どうせ否定したところで、マユは譲らない。
適当に、わかったよと返事をしておいた。
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