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そうだ。僕しか、あの化け物の正体を知らない。誰も信じてくれるはずが無いから、僕は僕のやり方で妹を探す。
だから、僕は、旅に出る。
あては無かった。だけど、マユがあの卵をもらった日から悲劇は始まったのだ。
あの卵はたぶん、夜店でしか手に入らないものだ。
リュックには、旅支度、お金だって、今まで貯めて来たお年玉がたんまり入っている。たぶん一週間はもつはずだ。あの卵屋を探し出して、手がかりを得る。僕は必ず、マユを取り戻してみせる。
僕は、その日から、近隣のいろんな町の祭りや花火大会、夜店を渡り歩いた。
三日目の朝、電器店のテレビで僕が公開捜査で捜索されていることがわかった。
もうバレたのか。きっと心配した親が、田舎に電話してバレたのだろう。
ごめんね、父さん、母さん。僕にもう少し時間をください。
僕は足早に、帽子を目深に被ると、その場を去った。
その日の夜、僕はついに見つけた。
その店は、屋台の片隅にひっそりと薄暗い灯りを灯していた。
「おや、坊やは、この店が視えるのかい?」
男とも女とも、若いとも老いてるともよくわからない店主が声をかけてきた。
店先には、所狭しと、乱雑に白い卵が置いてある。
卵を差し出してきた店主に要らないと告げると、明らかに嫌な顔をした。
「お代は要らないってのにねえ。」
と残念そうに、口を尖らせた。
「それより、僕の妹がここで卵をもらっただろう?ほら、〇〇神社で。」
するとわざとらしく店主は思案顔を作り、思い出したというふうに答えた。
「ああ~、あの迷子のお嬢ちゃんかい?不安そうにしていたから、卵をあげたのさ。これを持っていると、家族とあえるよ、ってね。」
「あの卵はなんなんだよ。あれから妹はおかしくなった。姿の見えないあの卵から孵ったものを飼いはじめた。」
そう睨むと、その店主は口が耳元まで裂けるかと思うほど満面の笑みをたたえた。
「すごいねえ、あの子。あの卵を孵したんだねえ。やはり卵が選んだだけのことはあるねえ。」
「妹は、そいつにさらわれたんだ。」
そう告げると、店主は驚いた顔をした。
「その卵から孵ったものは、どんな姿だったんだい?坊やは見たのかい?」
そう聞くので、僕は答えた。
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