羨望の花

7/7
前へ
/46ページ
次へ
ーーいいなぁ。 沙由記に梨華は輝いて見えた。 結婚していて、子供もいるようにはとても思えない華やかさ。 この人はたぶん、ずっと若々しくて、老若男女から羨望の眼差しを向けられる存在だ。 次の日、はやくもそれは明らかになる。 「いってきます」 はじめての外勤。施工会社の担当者の梨華を見る目はまるで少年だ。 私はまるで存在していないかのよう。 羨ましい。 たとえ、私が家を手に入れられる日が来たとしても。本当に欲しいものは一生手に入らない。 「ねえねえ、加藤さんは彼氏とかいるの?」 「…まさか、いないですよ」 「えー!もったいない」 本当に欲しいものは一生手に入らない。 だから、そう生きてきた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加